カルネージ!【完】




「海斗(カイト)サンって呼んでよ」


「……は、はあ」




提案した海斗さんに、曖昧な相槌を打って引きつった笑みを浮かべた。


阿久津とよく似た顔に、人懐こい笑顔はミスマッチで、否が応でも戸惑わずにはいられない。



非リア充には無縁なイベントを阿久津と一緒に過ごすことが恒例化しつつある今日この頃、本日ホワイトデーも例外じゃなかった。



例のごとく彼の暇つぶし相手として自宅へ呼び出されたのはいいのだけれど、今日通されたのはリビングだ。


いつも阿久津の家族は留守にしていて、彼の2階の部屋へ直行していたからそれ以外の部屋へ足を踏み入れるのは初めてである。



よく片付いていて、隅々まで掃除の行き届いている広くて綺麗なお家。




「……阿久津って、お兄さんがいたんですね」


「んー? 弟から聞いてなかった?」




一言も聞いたことなかった。


ていうか、私は勝手にあの我が儘な性格からしてひとりっ子だとばかり思っていたし、今も信じられていない。



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