偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
青田さん以外にお客様の姿はない。

私は青田さんのリクエストでデュエットソングを唄う。

「カノンちゃん…カウンターから出て来て並んで…唄おうよ!!」

「あ・・・はい」

青田さんは酔いが回ってるのか顔が紅く上気していた。

私はカウンターから出て青田さんの隣のスツールに腰を下ろす。

「今日はラッキーだよ!カノンちゃんを独り占め出来るなんて…」

「!!?」

青田さんはどさくさに紛れて私の肩の手を乗せて来た。

「実は前々からカノンちゃんのコトいいと思っていたんだ。店閉めて…俺ともっといいコトしない?」

「青田さん…変な冗談は止めて下さい」

「俺は本気だよ」

「本気って…」

ママのように上手くかわせない。

ドアが開いた。

私の肩を抱いた青田さんの手をどけて、ドアの方に振り返った。

「稜真…さん?」

「誰?カノンちゃんの知り合い?」

「知り合いと言うか…」

「おいっ!?そこのハゲ…俺の妻に何馴れ馴れしくしてんだ?」

「妻?」

「彼…私の夫なんです・・・」

「カノンちゃんって…既婚者!?」

「まぁー」
「今夜はツケにしといて…カノンちゃん」
青田さんは稜真さんの言い知れないオーラに怖気づいて店を出てしまった。

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