偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
俺と奈那子はそもそも妊娠するようなコトしていない。それを話せば、偽装だとバレる。俺は婆ちゃんのコトを引き合いに出して、父さんの納得するような説明をした。

「俺の言い方が悪かった。彼女は妊娠してないから…婆ちゃんが見合い話を勧めるから…彼女とは結婚する羽目になったんだ」

「母さんの見合い攻撃のせいか…拓真の時といい…母さんには困ったもんだ」

兄貴は婆ちゃんの勧めた女性を秘書にしてその後結婚した。二人の間にはまだ子供は居ない。

父さんは俺の目の前の食卓に腰を下ろした。


「どうぞ。辰真さん」

「サンキュー…純名」


「二人共ビールも飲む?」


「あ…俺は車だし…パス」

「今夜はウチに泊まって行けばいいじゃないか…稜真」

「あ・・・」
父さんが俺に優しくしてくれたのは姉貴が死んでから初めてかもしれない。

「どうする?稜真」

「父さんの言葉に甘えて…泊まって行きます」

「じゃビール用意するわね」

母さんは鼻歌を歌いながら嬉しそうに冷蔵庫を開ける。

「俺は明日から香港に出張だが、今度の日曜日…ウチに拓真達が遊びに来る。お前もヒマなら…彼女をウチに連れて来て、母さんに紹介しなさい」
今度の日曜日はクリスマスイブ。
ウチでクリスマスパーティをすると兄貴が言っていたな。

「俺はヒマだけど…明日…奈那子にも訊いてみる」

「彼女の名前は奈那子さんと言うのか…」

「地道奈那子。総務課の女子社員だ」

「そうか」

父さんは穏やかな表情で俺の話を訊いてくれた。
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