きっと、君を離さない



残業を終え、職場を出たのは11時過ぎ。
普段はそこまでの残業はない職場だけど、忙しい時期にはこれくらい遅くなることもある。

それに、今はとても大きなプロジェクトが稼働している。
絶対に成功させなければいけない。


今日は金曜。
ようやく週末だ。

世間では花金と呼ばれる日だけど、俺は疲れすぎていてそんな気にはなれない。
まっすぐ家に帰ってベッドにダイブすることだろう。



大きなあくびを一つ。
その時、ポケットの中でマナーモードにしていた携帯のバイブが鳴った。



ゴソゴソとポケットから携帯を取り出し見ると、春香の名前。




「珍しい・・・」




いつも電話をかけるのは決まって俺の方から。
それを、不満に思ったことなんて一度もないけど、かかってくるとそれは当然嬉しいもので。





「もしもし?」




ワントーン上がった声で受ける。
しかし、電話口から聞こえてきたのは、とても低いトーンの声。
それも、春香の物ではなかった。





―あの、大石さんの携帯ですか?






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