最後の恋の始め方
 「理恵ちゃん。好きだ」


 私を不幸の底なし沼からすくい上げなければならないという思い。


 架空の不倫相手という悪者に対し、正義の盾を手に戦いを挑む勇者のような気分になっているのかも。


 そのような使命感が山室さんを燃え上がらせているのかもしれない。


 そして私は……悪に洗脳され、身も心も言いなりになっている、哀れなヒロイン。


 そんな私を縛りつけるマインドコントロールから解き放とうと、山室さんは私に愛の言葉を告げた。


 「このまま理恵ちゃんが苦しむのを見て見ぬ振りするなんて、もう無理なんだ」


 「山室さん」


 「好きで好きでたまらないんだ」


 「……」


 先輩としては大切な存在で、ずっと仲良くしていきたいとは願うのだけど。


 恋愛感情は……無理。


 好きだと言われれば自動的にこちらもその人を好きになれるとか、そう単純なものではない。


 「以前は佑典とよりを戻すことが、理恵ちゃんの幸せだって信じていた。だけど今は違う。理恵ちゃんを救うことが俺の使命だって感じる」
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