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1.



初めてしろ先輩の絵を見たのは中学二年生の冬だった。


来年から受験生だからと、母に無理矢理どこかしらの高校の行事があれば連れてかれていた俺。
その日、そこの高校では最後の高校見学を開いていた。

母はイマイチぱっとしないという様子で、パンフレットをなんとなく読んでいるだけだった。俺はどこ行ったって高校なんて分かんないし、ぱっとするもしないも興味がなかった。

普通に近くて通いやすい高校でいいなんて思ってた。

冬の最後の高校見学なんて少数しかいない。中三の人たちの中にいる俺はなんだか余裕っぽく見えるんじゃないだろうか。

校内の案内をしてくれる在校生の後を見学者達がぞろぞろ後についていく中、俺は一人そんなことを考えていた。


「こちらが美術室です」といって教室のドアを開けて中に入っていく。
よく知る美術室の匂い。中学と変わらない。



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