Sweet Lover
『だぁってっ』

唇を尖らせる私を、その人は抱き上げたまま玄関に連れて行くと慣れた手つきで小さな靴を脱がせていく。

『あら?
 須藤くん。玄関で何やってんの?』

……ママ?
  ママの声、なの?


ドキン、と。
心臓が弾む。
息が苦しい。

あの事故以降、私ははっきりと両親のことが思い出せないでいた、から。

『ん? 俺と将来一緒にアメリカで暮らすために、日本家屋にも関わらず靴を脱がないかわいこちゃんに日本のルールを教えていたところ』

『あら。須藤くんって、海外留学でもするの?』
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