Sweet Lover
「電気……、点けて……」

真っ暗な世界が、ひたすら怖い。

「少しだけ、手を放すけど大丈夫?」

その頃には私にも、この低く甘い声が、響哉さんの声だと分かり始めていた。
こくり、と小さく頷く。

すっと体が離れる。代わりに私は自分で自分を抱きしめていた。

数秒後には部屋に蛍光灯が明々とともった。

黒のシルクのパジャマを着た響哉さんの心配そうな眼差しに、申し訳ない気分でいっぱいになった。

響哉さんはベッドに腰掛けると、しょげている私の頭をそっと撫でる。

「もう一度、抱きしめてもいい?」

私が小さく頷くのを確かめてから、ベッドに足をあげ、その腕にそっと抱き寄せてくれた。
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