Sweet Lover
「花宮。
 ここは、よろず問題解決所じゃないぞ」

佐伯先生は、ドアを開けた私を見て、やれやれと肩を竦めて見せた。

「だって、梨音が。
 響哉さんのところに抗議に行くって言うんだもの」

「――俺のところに、何の抗議?」

予想外に響哉さんの声が聞こえてきて、びっくりした。

今朝、私を見送った後――。
監督が早速送ってきた台本に目を通すって言ってなかったっけ。

またも勝手にベッドに寝ていたらしい響哉さんが、カーテンの向こうから出てきた。

梨音は一瞬驚いたようだが、それでも唇を開く。

「真朝を攫っていかないで下さいっ」

「俺は別に、人攫いじゃない。本人も合意の元だよ」

響哉さんは涼しい顔でそう告げる。
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