Sweet Lover
響哉さんは戻ってきた店員さんと、アロマライトの話をつけ、金額の交渉と納品日を打ち合わせてから、その店を出た。

昼食に寄ったレストランでは、シェフが出てきて挨拶するし、やっぱり周りからざわめきが起きる。

彼のルックスが、明らかに人目を惹く素敵なものだということは分かるけれど。
名札をつけているわけじゃあるまいし、名前まで知られているって……どういう、こと?

「……アナタ、誰?」

ランチが来るまでの待ち時間に、耐え切れなくなった私がそう聞いてしまったのも仕方がないことだと思うの。

響哉さんは、一瞬目を丸くして、それを解くとふわりと微笑んだ。

「須藤響哉って、まだ名乗ってなかったっけ?」

「それは、聞いたけど」

前菜として置かれたルッコラのサラダに目を落としながら私は歯切れ悪く答える。
< 76 / 746 >

この作品をシェア

pagetop