砂の鎖
今日、私がいつも放課後を過ごす慣れ親しんだ図書室ではなく進路指導室に来た理由。
それはもちろん、佐伯に言われた通り大学を調べるため。

でもそれは本当は口実だったことを、佐伯の最後の言葉で見透かされた気がした。


暮れなずむ中、自転車を引いて校門に向かい足早に進む。

校庭では、まだ陸上部は練習をしていた。

私は彼らに見られないように、私も、彼を見ないように。
なるべく見えにくい生垣の傍を移動していた。

どうして私がこんなにこそこそする必要があるんだろうと、少しバカみたいだとも思いながら。
それでも隠れずにはいられなかった。


――放課後話がしたい。


そう言った真人は、私が放課後を図書室で過ごすことを知っているし、今日はスーパーのタイムセールで私が五時ごろまで学校に残りたい事を知っている。

そして私が今、真人とあまり話をしたくないと思っていることに気が付いている……

私が大学を調べようと思ったのは、私にとって真人と向き合うことより進路と向き合うことの方が、取り掛かりやすい問題だっただけだ。
そして、真人が想像しないであろう場所で時間をつぶしたかっただけだ……


そんな浅はかな自分に、思わずため息が漏れた。
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