砂の鎖
「お前ら席につけー! ホームルーム始めるぞ」


いつの間にかそんな時間になっていて、教師とほぼ同時に、朝練が終わった生徒たちがバタバタと駆け込んできた。
その中に当然いる真人は同じ部活の生徒たちと笑っていて。それでも一瞬、私を見つけると笑顔を向ける。
私はそれにぎこちなく笑顔を返し、麻紀は私の小脇を肘でつついてから自分の席へと向かった。


「進路希望用紙配るから、ちゃんと大学調べて記入して来いよ! 提出期限は明後日だからな」


担任の熱血教師がそう言いながらA4のプリントを配り始めればば教室中から悲鳴があがった。
そんな多くの生徒にとって煩わしい紙が前の席から無言で回ってくる。


「ありがと」

「あ……うん」


一応、前の席の女生徒にお礼を言えば、彼女も一応は返事を返した。

前の席の女生徒は例の陸上部のマネージャーと友達らしく、私に好印象は持っていない様だった。
それでも麻紀と同じバレー部に所属している為、麻紀の友達である私にあまり余所余所しくも接しにくいらしい。

そんな複雑な思いを私はプリントと共に受け取った。


同性からの居心地の悪い視線と、数少ない友人の心地よい軽口と、私にはもったいない彼氏の眩しさ。
甘ったるい拓真への苛立ちと、死んだママの影。
そして居心地が良くも悪くもないこの教室。

これが今の私の日常の、ほぼ全てだ。
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