砂の鎖
「弁当自分でつくってるんだよな」

「朝起きれた時だけだけどね」


二人で階段室の壁にもたれて並んで座ればパラペットに遮られ校庭は見えなくなる。
視界は一面、空だけになる。


「すごいな。俺自分で弁当なんて作ったことない」

「必要に迫られたら誰だってできるよ」


真人はいつだって、てらいなく人を褒める。

真人の隣はまるで陽だまりみたいだ。太陽がさんさんと降り注ぐ陽だまり。
明るすぎて、暖かすぎて、余りに私にはそぐわなくて時々居心地悪くも感じられる。


「今度俺にも作ってよ」


そう言って嬉しそうに笑う真人に私も笑って頷いた。

今日のお弁当は拓真が作ったことは内緒にしておこう。
でもお弁当を三人分作るとなれば、拓真が何を言うだろうと思うと少しだけ面倒な気もした。


「たいしたものは作れないけどね」


そう言って弁当箱のふたを開いた瞬間、私はぎょっとして又その弁当箱を慌てて閉じた。
そんな私の行動に真人はぷっと吹出す。


「亜澄って普段クールなのに意外と可愛いな」


そんな事を言われて、顔が熱くなった。


「キャラ弁なんてかなり意外なんだけど?」


そう言って真人は我慢できなくなったらしく声をあげて笑い出した。

そう……一瞬見えたそれは、丸いおにぎりにノリで模様を書いて熊の顔を形作っていたような気がする。
周りにはタコさんウインナーとかもあって……

幼稚園児が喜びそうな、かなり可愛い弁当で……


「違うこれは……っ!」


拓真が作ったんだと言おうとして、言葉を飲んだ。
あの義父が作ったと言うの、私が作ったというのと、どちらが恥ずかしいだろう……


「……ちょっと、暇だった……っていうか……」

(拓真のアホっ!!)


結局考えて私は後者を選んだ。
あんな変な人と一緒に暮らしていると思われる方が恥ずかしい。
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