LOVE SICK
挙式に参列したとしても、その事実を新婦にばらすつもりも何かする気も勿論無い。
けれど、新婦は妊婦だと聞いている。その奥さんに、万が一でも動揺を与えてはいけないと思える程度には、私だって常識はある。

私の存在は絶対に気が付かれてはいけない。妊娠なんてしていなくても女の人が最も輝ける、幸せになれる一日に、そんな事があってはいけない。


例え彼女が立つその場所が、三ヶ月前の私が夢見ていた場所だったとしても……



仕事の為。

周りの人の為。

斎木さんの為。

奥さんになる人の為。


披露宴を欠席する理由を私は沢山考えた。

周囲が納得する理由。
斎木さんが納得する理由。

そして、私が納得する理由。



けどどんなにそれらしい言い訳を考えてみても、結局は、別の女性の横で幸せそうに笑う斎木さんを見たくなんてない。それだけだ。


別の女性に永遠の愛を誓う彼を見て、平静でいられる訳が無い。
そんな、惨めな思いしたくない……

結局は自分の為でしかない。



どうしてなんだろう。
別にもう、斎木さんのことが好きな訳ではないと思う。
それなのに、心の奥に沈み込んだ重石は軽くなる事を知らない。
ふとした瞬間に、その存在を主張する。


(なんかやだな……)


閑散としたオフィスで一人溜息をついてデスクに突っ伏してみた。
人が居ないから妙に静かで……喧騒の中では気が付かないパソコンの音や空調の音がやけに耳に障る。


やけに、苛々する……
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