LOVE SICK
「NOCって大きい会社なのに……エリマネがあんなに若くていい男だったなんて!」


外まで見送る私について、山内さんも一緒に出て来てくれて二人でその背中が見えなくなるまで笑顔で見送った。

山内さんが言う通り。祐さん、管理職を匂わせていた事はあったけど……
全国展開の情報機器メーカーの管理職だったとは……

三十代の若さでそれ自体驚くべき事なんだけど、まさか私の担当企業最大手のエリアマネージャーだったなんて……
私の中ではそちらの方が重大だ。

はしゃぐ山内さんに、私が浮かべる笑みは愛想笑い以外の何物でも無い……


「……ふうん?」


そんな私たちの背後から不機嫌な低い声が響いてきた。

なんで不機嫌なの、この人……

と、言うか、なんでいるの。この人……


ああ。支店長の席って営業フロアにも総務フロアにもあるんだっけ……

……まあでも、一人だとつまらないからおりて来ただけなんだろうな……


「あの……支店長?」


どんなに不愉快な男でも、他の人の前で不機嫌な支店長を無視するなんてしていい筈も無く仕方なく声をかける。


「川井さんもドキドキしたでしょ? 珍しくどもっちゃって! あんないい男目の前にしたら女なら仕方ないわよね」


けれど私の気遣いなんて山内さんはあっさりぶち破って興奮気味に話している。


「へぇ。山内さん、俺よりいい男? そのエリマネ」

「もぉ、斉木支店長! 何言ってるんですか! お気に入りの川井さん取られそうだからってヤキモチ妬いちゃって!!」


……山内さん変な盛り上がり方しないで下さい。

確かに、この斎木支店長は私の……多分、元彼で、今の素敵なエリアマネージャーは……まあ、何と言うか…いわゆる、私の……セフレ……ですよ……?

山内さんの想像以上に面白い事になってますよ?


「おい。川井。仕事に私情挟んでんなよ」


……そのセリフ、貴方にだけは言われたくないんですけど……
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