恋するオトコのクリスマス
遠距離恋愛のカップルなのか、ずいぶん名残惜しそうだ。

だがそれ以上に、和也はそのふたりの顔に見覚えがあるような……そう思った直後、ふたりは抱き合ってキスを交わし始めた。

早朝なので利用客は少ないが、それでも何人かが冷やかしながら過ぎていく。


「……O空港のロビーに立つと、誰もが妙な気分になるのかもしれない」


和也があらためてそんなことを口にすると、


「そうですね。衝動に背中を押される、というか……男だけかもしれませんが」


神谷も真剣な口調だ。


「どうしますか、キャプテン。あまり盛り上がるようなら、注意の対象になると思いますが」

「まあ、あれくらいなら許容範囲でしょう。それにあのふたり、おそらくは私と同郷だと思います。狭い町なので……昨日、郷里の駅前で、結婚式の衣装で写真を撮ってましたね」


偶然通りかかっただけだが、歩美がやけに羨ましそうにみつめていたのを思い出す。


「本当ですか? すごい偶然ですね」


いろんなことが偶然で、それでいて偶然ではないのかもしれない。

和也は帽子をかぶり直して、神谷に向かって声をかけた。


「さて、今年のクリスマスも終わりです。新しい年に向けて、気を引き締めていきましょうか、神谷さん」

「ラジャー」



With Best Wishes for Christmas and a Happy New Year.





                        ~fin~




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