恋するオトコのクリスマス
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ホテルのロビーに美夏の姿を見つけた。
彼女は瞬たちより少し年上のカップルと笑顔で話している。


「美夏!」

声をかけると美夏はこちらに気づいた。
彼女はカップルに……主に、女性に頭を下げたあと、瞬のほうに駆け寄ってくる。

女性が瞬に向かって軽く会釈したので、彼も同じように返した。


「遅くなって悪い。あの人たちは……知り合い?」

「幸福屋デパートの相楽……結婚なさったから藤倉GMね。歳は違うんだけど入社時期が同じだったから、わたしが本店で働いていたころは親しくしていただいていたの」


幸福屋グループで“相楽”と言えばオーナー一族のことだ。O市トップの資産家で、その中でもデパートのゼネラルマネージャーといえば、創始者の孫娘だったと覚えている。


「辞めて三年も経つのに、覚えていてくださったみたい」


美夏は声をかけられたことが素直に嬉しかったのか、頬を紅潮させながら話す。
今夜の彼女はクリスマスディナーにふさわしくドレスアップしている。出産前後は髪を肩の長さに切っていたが、最近は結婚前と同じ背中までの長さだ。


「黒のワンピースがセクシーで、人妻に見えなかったんじゃないか?」

「それって褒めてるの? 貶してるの?」

「褒めてるんだって。それで、愛里は? ぐずってなかったか?」


娘のことを尋ねると、美夏もとたんに母親の顔になった。


「ぐずるも何も……従弟のタケルくんと遊んで、じいじやばあばとクリスマスパーティをして、疲れ果てて八時には寝ちゃったわ」


思い出したのかクスクス笑いながら言う。

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