わたしの想いがとどくように
春、君に失恋する
彼氏とか彼女とか、みんななんでころころ変えてしまうの?
わたしには理解出来ない。
好きな人は1人だもの。
昔から、今だって…
でも、この恋は報われない。報われなくても良い。


あなたが好き、それだけでも伝えられるなら…




相模弥生は、学校に行く道を1人で歩いていた。セーラー服に背中より少し下の髪の毛を揺らしながら、車の並ぶ門を通る。
長い長い校舎までの道のりを弥生は上をむき、満天に咲く桜を見ていた。

「おはよう!弥生」

車から話しかけられて、弥生はそちらをむいた。

「おはよ!」

弥生は明るく笑う

「また歩きー?」

「当たり前!わたしは町並みを見るの大好きなんだもん」

「そっか、同じクラスだといいね!」

弥生は手を大きく降った。空はすっきりした青空で、弥生はとても大好きだった。

「そだ、幸乃ちゃんとこ行こう」

幸乃は弥生の従姉妹で、昔からなんでも相談しているお姉さんだ。今は、弥生がいく私立榮南高校で保険医をしている。
榮南高校は、財閥や大会社の子どもが行くような高校である。弥生は、運動場の端にある保健室な入った。

「幸乃ちゃん!」

弥生はにっこりと笑った。
幸乃は、弥生を眼鏡ごしから見ると、微笑んだ。すごく美人。その一言につきる彼女ではあるが、学校では眼鏡で黒髪を一つに結わいて隠している。

「弥生ちゃん、来たの」

「うん、今日から高2だし!」

「そっか、そろそろお見合いがくるわね」

「うん…、でもやっぱり嫌だな」

弥生は幸乃が座っているイスと隣りの丸イスに座った。

「幸奈が好き?」

弥生は悲しく笑った。相模幸奈、弥生の従兄弟である。風紀委員で、今日は弥生よりも早く出て行った。多分、玄関にいるだろう。相模家は昔からある財閥で、いろいろなことを昔からさせられていた。弥生も一通りのことを高校に入るまでやった。全て平均的だった。幸奈は、弥生の何倍もいろいろなことをさせられていた。全てを完璧にこなしていた。弥生は昔から、そんな幸奈が好きだった。しかし、相模家では、親族同士の結婚は決して許されなかった。
ずっと昔に、従兄妹で結婚した当主が出来た子でもが、障害児だったときから、二度とないよう禁止したのだった。
そして一緒に住むことにも、意味があった。兄弟のように過ごせば、恋愛感情は育たないだろうということだ。
しかし、弥生には意味がなかった。気持ちは昔から変わらない。昔から幸奈が好きだった。
しかし、昔から言われていた。弥生は20歳までに結婚する。だから、そろそろお見合いが始まるのだ。弥生は幸乃が心配そうに見るのを、笑顔で答えた。
弥生は丸イスから立ち上がった。

「じゃあ、行くね」

保健室から出て行くと、幸乃に手を振った。

「…仕来たり…か」

幸乃はそうつぶやいた。

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