異常性欲の二人


事故があった現場を見た僕の両親や兄弟たちは口々に「運が良かったね」そう言った。


確かにそうかもしれない。転落地点があと50センチずれていたら、間違いなく僕は車もろとも池に落ちて水死していただろう。


震災は罪もない大勢の人々の命を奪った。なのに罪深い僕は生きている。やはり、この世に神様なんていない。


大型クレーン車にゆっくりと釣り上げられていく車を茫然と見つめていた。


もう一人の僕のが言う。「死ななくてよかったな。これでわかっただろう?元々お前に死ぬ勇気なんてなかったんだ。なぜならお前はまだまだ世の中に未練がある…」


『未練?バカな、4年以上も連れ添った妻にも見捨てられてしまった僕に、いまさら未練なんてあるはずがない』


「ウソをつくな、この変態野郎め。お前は世間体ばかりを気にして、自分の本能を胸の奥に押し込めたまま生きてきた。本当はあの女子中学生を調教したいと思ってるんだろ?」


『違う、僕はそんな鬼畜じゃない。だいたいそんなこと犯罪じゃないか』


「あははっ、おいおい犯罪だと?確かに法律上は犯罪かもしれないが、しかし無理矢理やるわけじゃないだろ。それどころか彼女はお前に調教されることを望んでいるんだぞ?」


『でもそれは…』


「あいつの彼女だからって遠慮することないだろ。あいつから頼んできたんだぞ?自分の彼女を調教して欲しいって」


『ああ、そうだ…』


僕はそんなふうに自問自答を繰り返しながら、高校時代の友人である「桐野」から突然かかってきた電話の内容を思い返していた。


それは驚くべき内容だった……。


< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop