Merry Christmas!





 ―――私は優香里の言葉を思い出していた。


 手帳には、空欄。その日付はクリスマスだ。前日が、クリスマスイブ。

 ため息が出た。

 風間君からは、クリスマスイブもクリスマスも会えないと言われていた。年末は忙しいと。バイトもあるだろうし、勉強だってあるだろうから、私はそっかと返事を返した。
 私自身、頻繁に会わなくてもいいタイプだった。連絡はちゃんと取り合っているから、平気。



 平気、だけど。



 カフェの外は、人。それからクリスマスの飾りで賑わっている。店もプレゼントにいかがというように宣伝されていた。そんな中、人々が歩いていく。いろんな人。寒そうにしているけど、なかにはまるで寒さなんかとでもいわんばかりな、仲良さそうな男女が過ぎていく。

 それを見ると、やっぱりちょっと寂しい感じがする。

 風間君は真面目だ。資格もとっているし、将来をちゃんと考えていて、凄いと思う。冗談まじりに「いつか一緒に暮らせたら楽しいね」などという彼。

 大好きだ、と思う。

 染めない真っ黒な髪の毛や、意外にごつい大きな手。

 思い出すと何だか寂しくなるから、無理矢理追い出す。今ごろ何しているのだろう。無理をしていなければいいけど……。


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