重ねた嘘、募る思い

「もしよかったら僕も混ぜてくれない? このまま帰るのもしゃくだしさ」
「ふーん、私は別にいいけど」

 えっ、真麻ったらなんでそうなるの。
 確かに今、真麻はフリーだけどいいのかな。でもまあこの男の人もフラれたって言ってたし問題はないのかもしれないけれど、なんとなくふたりのようにさらっとこの状況を受け入れがたい。

「本当に? よかった。えっと、名前聞いていい? 僕はヨウ。太陽の陽一文字。呼び捨てでいいよ」

 さっきと同じ自己紹介を真麻にして、陽さんがうれしそうに頭をと下げた。
 
「私は真麻、こっちは」
「あっ!」

 真麻がわたしの名前まで言いそうになったのを慌てて止めると、その声の大きさにふたりが同時にこっちを見た。
 名前、言わないで。自分の名前を知られたくない。
 そんな思いを込めて真麻を見ると、うんと小さくうなずいた。真麻はわたしが自分の名前にコンプレックスを抱いていることを知っているから。

「じゃーのんからちゃんと自己紹介」

 ぐっと真麻に腕を引かれ、引き下がれなくなった。
 うぅ、名前は言いたくないから適当に誤魔化してほしかったのに。

 
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