重ねた嘘、募る思い

6.もしかして助けてくれたの?


 実習中の醍醐くんを見て気づいたことがある。
 大学生になった彼は実習仲間と楽しそうに話したり、一緒に食事をしたりしている。

 長い期間実習という苦楽を共にする仲間だ。
 私も実習メンバーは同士として未だに仲良くしているから気持ちは分かる。
 ひとりで乗り越えられるほど甘い世界ではない。みんなの協力や励まし、声かけがあったからこそ私もやってこれたと感謝している。

 そんな醍醐くんを見てなんだかうれしかった。
 ずっとひとりだった醍醐くんしか知らなかったからまるで別人を見ているよう。
 だけどその反面、ほんの少しやるせなさを感じた。
 私と話している時にああいう顔をさせられなかったことが残念でならない。
 でも私は醍醐くんには嫌われているから笑顔にできなかったのは当たり前のことなんだろうけどね。

 受け持ち患者の高丸さんともうまくいっているみたい。
 私達ナースには医学生の記録やどんな実習が行われているのかはよくわからないけど、ナースステーションにカルテを見に来たり夜勤帯の情報を看護記録から拾ったりしている姿は応援したくなる。

 あと数週間だけど頑張ってほしい。
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