重ねた嘘、募る思い
 
 食事を終えて部屋に戻ると陽さんから三通もメールが届いていた。
 携帯番号からのメール送信。そう言えばアドレスの交換はしてないはず。

  『急に電話が切れたからどうしたのかと心配してる』
  『気づいたらメールでもいいからちょうだい』
  『ただ無視してるだけなら、こっちにも考えがあるからね』

 脅しだ! 脅しとしか言いようがない。
 数分間隔で何度もこんなメールを送られたらそうとしか思えない。
 考えが“あるからね”だなんてさも穏やかそうな口調で書いてるけど絶対に怒っている。
 想像しただけで恐ろしくてベッドの上で身震いしてしまった。
 なんでこんなふうにわたしを追いつめるのだろうか。陽さんが何をしたいのかその意図が全くつかめない。
 とにかくメールでもいいならメールで返事しよう。まともにしゃべれそうにない。

  『ご飯を食べてました。ごめんなさい。今日はもう寝ます』

 いきなり電話を切ってしまった失態と、その後すぐに返信せず食事に行ったことの謝罪は一緒くたでいいだろう。返信が来てもスルーだ。寝るって言ってるのだから問題ないはず。
  
 コートのポケットに携帯を入れて部屋の電気を消した。
 まだ二十一時になったばかりだけど。寝てしまおう。起きていて万が一それがばれたら恐ろしいもの。まさか真麻が告げ口したりはしないだろうけど……。
< 42 / 203 >

この作品をシェア

pagetop