重ねた嘘、募る思い

「図星だ。僕も行く」
「はっ?」
「おいしいカフェオレ持って行くよ。九時に例の場所集合でいいかな」
「ちょ、ちょっ……」
「僕の分もお弁当作ってほしいな。たまご焼きと唐揚げ。あとタコさんウィンナー」
「はあっ?」

 何勝手なことばかり言ってるんだ、この人は。
 呆れて物も言えずにその顔を見上げる。自分では精一杯睨んだつもり。
 それなのに、陽さんはうれしそうにニコニコと笑っていた。それもなんだか照れくさそうなのは気のせいなのだろうか。

「じゃ、明日楽しみにしてるね。送りたいけど、迷惑でしょ?」
「え、あ……」
「気をつけて帰るんだよ。変な人に絡まれないようにね」
「あっ、あのっ」

 駅の方向へ去って行こうとする陽さんを思わず引き止めてしまった。
 このまま言いくるめられてしまったらどんどん陽さんのペースに巻き込まれて変な展開になりそうだし、ここら辺で軌道修正しておく必要があると思ったから。

「なに、のんちゃん」

 またうれしそうに戻ってくるその顔を見て、どきんと鼓動が高鳴る。
 そんな顔を見せないでほしい。そう思いながらもわたしは伝えなければならないことをうまく頭の中で纏めるのに必死だった。だけどわたしが男の人にうまく説明なんかできた試しはない。
 
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