白雪姫の王子様




「どうして……こんなになるまで」



見つめる先のその口は、キュッと一瞬弧を描いた後、開かれた。



「……俺の、一番大事な人だか、ら──」


「っ!? さ、いかわ、くん? 犀か……」



地面に滑り落ちた腕。


私は必死でその手を両手で握りしめる。


いくら待っても、声が返ってくることはなくて。



「……や……っいやあああああ!!」



空を切り裂くような叫びは、虚しくも大きな雨音に掻き消された。




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