忘れられない人がいる。
「周りから見たら綾一人に見えるんだよな。」

隼人は呟いた。

「そーだね。」


確かに考えてみればそうだ。
隼人は死んだんだもん。見えないもんね。
さっきからの隼人との会話も、
周りから見れば私の独り言だ。

「だからさっきから
通りすぎる人が私をジロジロみるのか。」

すると急に隼人が吹き出した。

「アハハッ!!
やべー。周りから見たら
綾、変人じゃんよ!」


この笑顔も懐かしい。
あの日まで当たり前に見ていた笑顔が
こんなに愛しく感じられるなんて。


何度思い返しても足りない。
“あの日私が道路に飛びださなかったら
隼人が私をかばうこともなかった”って。
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