同級生

タクシーは止まった。
…お見事。


「高原くん、先に乗っていいよ。私はまたつかまえるから」


僕は彼女に言われるがままにタクシーに乗ったけど…


「福澤さんも一緒に乗ったら?僕は中野だけど…家どこ?」

「あ、全然逆方向だ。いいよ、私は」

「でも…」

「いいってば!運転手さん、中野ですって。行ってあげてください。じゃあね!」


彼女はドアを閉めた。そして手を振っている。


「発進していいですか?」

「…ちょっと待ってください」



窓を開けてもらい、彼女に僕の名刺を渡した。


「これ僕の連絡先…また会おうな!」


彼女は笑っているだけで、返事も頷くこともしなかった。


こうしてこの夜は、想像もしなかった時間を過ごし、別れた。



僕は後悔した。

男としてやっぱり、彼女を先に乗せるべきだったんじゃないか…と。

彼女は…無事に帰れただろうか…。
気になった。


彼女は自分の住んでいるところや連絡先は教えてくれなかった。

今度会う時は…彼女からの連絡を待つしかない。

でも…彼女からの連絡はなかった。


< 17 / 164 >

この作品をシェア

pagetop