音の生まれる場所
苦しかったんだ…って
辛かったんだ…って
不安だったんだ…って……

朔は…

ホントは…声に出したかったと思うのに…
…言いたかったと思うのに…


「何も言わなかった…何も…聞いてないよ…朔…」


ここに眠ってるのは違う。
静かにしてるのは違う。

違う…違うっ!…違うっ!!


「違う…ここにいるのは…朔じゃない…!こんな静かなのは朔じゃない…!!」


拒否しながらも零れ落ちる涙。
心は拒否するのに、頭ではちゃんと理解してる。


朔が死んだこと。
この世にはもういないこと。

目の前から永遠に去ってしまった……

もう会えない。
もう話せない。
もう…二度と…キスもできない…。

信じたくない。
認めたくない。
歯痒い。
悔しい。

どうして…
どうして…


「…どうして…」


還ってきて…
戻ってきて…

朔……


「…お願い…どうか戻ってきて……!」

何処へぶつけたらいいの⁉︎
怒り。悲しみ。戸惑い。不安……
握りしめた手の中で、全て、押し潰されていく…。


…こんな事なら、
毎日でもお見舞いに来れば良かった…
少しでも長く…
朔といれば良かった……。

ブラスなんかに行かずに
一緒にいてやれば良かった……。


もう二度と…
楽器には触れたくない…。

もう二度と…
音は聞きたくない…。

朔がもう…吹けないのなら……

朔ともう…音が重ねられないのなら……


「もう二度と…ブラスはやらない……!」




自分から遠ざけた。
音を…
楽器を…
ブラスを…


二度と触れたくない。

辛い思い出を封じ込めた………。
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