追憶のエデン
渉さんと一緒に暮らしてからというもの、渉さんの休日ともなると、こうして寝過ごしてしまうことは稀ではなかった。
それは…まぁ…前日に、身体をちょっとだけ、酷使してしまうから、なのだが……。



「そうそう。今日は前から言ってた買い物にでも行く?未羽、確かワンピースを見たいって言ってたよな?」


「うん!行きたい!」


遅めの朝食、もといブランチとなってしまったシェフの方が用意してくれた、とろとろのポーチドエッグとオランデーズソースが堪らないエッグベネディクトをはふはふと口の中に頬張りながら、あたし達は午後の予定を立てていた。


「それじゃあ、未羽の支度が出来たら早速行くか。ってそんな慌てて食べなさんな。待っててやるからゆっくり食べな。」


「はーい。ふふっ」





*





「それで…今回のイスペラディティアで起こった事は神界の連中…ってわけか?」


と気怠げに言うのは、集められた各同盟国の王の一人であり、猫っ毛なブラウンの髪に灰色がかった眠そうな瞳をぼんやりとさせたベルフェゴールだった。


「タイミング的にも、不自然な程しっくりくる…間違いないでしょうね。」


深い闇を纏う紫の短髪と、同じ瞳を持つマモンが僅かに下がった眼鏡のフレームを少し押し上げ、冷たい声で言い切る。


「にしてもさぁ、またぁ?って感じ。神様って、意外としつこいんだねぇ。」


「う~ん…でも、今回は、何か前回とちょっと違う…と思う。」


深紅の髪に薄い紫の垂れ目、そして泣き黒子がセクシーさを引き立てる中性的な顔のアスモデウスの言葉に、何か考えている様子の、ふわふわとした桜色の髪と丸いエメラルドグリーンの瞳を持つ、少し幼い顔をしたベルゼビュートが答えた。


皆のやりとりを静観していたルキフェルが口火を切り、皆の知らない事実に、他の者は戸惑った。

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