追憶のエデン
「君が、グレン君?実にいい男に育ったものだ。ソフィアに……、君の母様に感謝しなければならんな。
そうそう、これでも随分君を探したんだよ?預けられた先の孤児院の女は知らないの一点張りで困ったもんだった。」


高そうなスーツを着こなす、少し渋さがあるものの整った顔立ちの男。
しかしその肌の色も、髪の色も、瞳の色ですら、


俺と同じ色だった――。


「随分と俺の事、知ってるみたいだけど、俺に何か用?」


「私は君の実の父親だ。ソフィアが君を隠してしまったから、君とは面識がないのも無理はないが……しかし事情は変わった。君は今日から私の屋敷で、次期当主として教育を受けながら暮らして貰うよ。」



ここで俺の意識は完全に途切れている。


気付けば無駄に豪勢な屋敷に連れて来られ、自分の部屋だと言われた部屋で監禁生活を強いられていた。



「……はぁ…。グレン、何人目だ?
家庭教師の先生を食い散らかすのも大概にしなさい。」


「はっ、数えてねーから、わっかんないや。アハッ。
それに、俺から誘ってるわけじゃないし、インキュバスの俺に食事を我慢しろなんて酷い事、父様なら言わないでしょ?」


「あーはっはっはっはっ!グレンには困ったもんだな!また、女を探しに行かないとならんじゃないか!!
本当に、意地汚いな――ッ」


「――ッ!!」


思い切り殴り飛ばされれば、また部屋に鍵を掛けられ部屋から逃げられない様にされる。



ここは部屋というよりも、牢獄の様な場所だった。
シングルベッドが一つと、机と椅子が一組、備え付けのクローゼットが一つ。唯一開くドアの先はトイレとユニットバス。これらが無機質で冷たい壁がぐるりと囲む部屋に置かれているだけ。
また、唯一の窓には特殊な鉄格子が嵌めこまれており、姿を蝙蝠に変えて逃げ出そうにも、出来なかった。


「――ほんと、最悪……」
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