追憶のエデン
またもイヴと呼ばれ、自分を抱きしめている男の腕を振りほどき振り返る。

するとそこには月の様な色は無く、変わりに輝く銀糸を持った外ハネの髪、意志が強く、何者にも屈しない金色の瞳。線は細いのに純白のクロークから覗く肩から伸びる腕はしなやかな筋肉を纏い彼は男なのだと主張する。
そして何より、誰もが平伏してしまう様な圧倒的な存在感。何もわからないのに畏怖の念を抱かせた。


(この人、何者なの?)



「この人何者なの?か……。
あんの役立たず……。」


「えっ!?ちょっと待って!今何て!?まさか心が読めるの?」


驚いた――まさか心を一字一句正確に読まれるなんて。そしてその事が更に恐怖を煽っていく。


「めんどくせぇ……。
人間如きの考えている事なんざ、手に取るようにわかる。
わかりたくもねぇけどな。」


やはり彼もまた人外で、堕天使なのだろうか?そんな思考が頭をよぎると、


「あんな下賤な者と俺を一緒にするな。
俺の名前はヤハウェ。全知全能であり唯一神。世界の創造主。レベルが違う。」


無知な自分が恨めしいが、どうやら神様とやらに出会ったらしい。
そしてその神様も、あたしをイヴと呼ぶ。
またもや、許容範囲外の状況だ――。


「どうした?そんな間抜けな顔をさらして。
だが……そんなお前も愛しく感じる俺もどうかしてるな。
イヴ……もっとお前を感じさせろ。」


一瞬の事だったから完全に油断していた。
開いていた筈の距離は詰められ、腕の中にまた引き戻されると、かなりの至近距離に綺麗なヤハウェの顔あった。
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