追憶のエデン
Episode9
瞼の奥で感じる温かく淡い日差しを感じ、ゆっくりと覚醒する。


――朝。


当たり前が当たり前でなくなって、再び見慣れた筈の光景が視界に入れば、キュンと心を甘く締め付けてくる。
宝石の様に深く澄んだ青を携えた瞳は未だ夢の世界を映しているのか、少し幼く見えるルキフェルの寝顔が隣にあり、朝日を浴びキラキラと輝く金糸の様な髪をそっと一房掌に乗せてみた。するとその柔らかく艶やかな髪は指の隙間をさらさらと流れて行き、その感触に思わず笑みが零れた。


しかしもう一度ルキフェルの髪に指を通すと、ふわりと長く綺麗な白い指があたしの指を絡め、大きな手に包まれれば、そのままルキフェルの頬へと寄せられた。吃驚して、手を引くと逆にルキフェルの腕の中に閉じ込められてしまった。起きているのかと思い、大人しく腕の中に包まれたままルキフェルの顔を見上げると、ゆっくりと瞼が開いて行き、綺麗なサファイアブルーの瞳の中にあたしの顔が映る。
そしてルキフェルはこつんとおでこ同士をくっつけふわりと微笑み「おはよう。」と朝の挨拶を告げれば、自然とあたしの笑みも零れ優しくおはようの挨拶をルキフェルに告げる。


ルキフェルの頬に赤みが仄かに指す。
そして顔が少し熱いと感じているあたしもきっと、ルキフェルと同じ様になってるんだろう。


「ふふっ。」


「どうしたの?急に笑って。」


「別に?何でもないよ。」


「そう?可笑しな未羽。くすっ」


一緒だと思ったら何だか可笑しくて、そして昨夜で変わった空気感が何だか気恥ずかしいけど嬉しかった。
そんな事を考えたら思わず笑ってしまったなんて、ルキフェルには内緒――。



ふわふわとお砂糖が溶けて行く様な感覚。
まだ夢の中にいるような、でもそれは紛れもない現実なのに、それならもっとお砂糖の様に溶かされたいなんて……。



「ねぇ、ルキフェル。」


「なぁに、未羽?」



ゆっくり重なる唇。
仕掛けたのは、罠にワザと嵌ったふりをしたのは、きっとお互い様。
< 82 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop