ブラッド・プレッシャー

別離からの出会い

あの事件から1ヶ月

祖父が死に姉が行方不明になりながらも
竜也の生活は平穏な日々に戻っていた

幸い祖父は竜也たちに多額の遺産を残していたため竜也はお金にはあまり困らずに生活出来ていた

今年で19になる竜也は元々家事をほとんどやっており、急な一人暮らしは寂しくはあっても不便ではなく、アルバイトをしながら祖父の道場の後継者として努めてる

竜也の家は道場と隣接しておりそこで祖父は師範として達也の他数名の生徒に武術を教えていた

日課のランニングから帰ると竜也は玄関先で隣の家のおばちゃんに出くわす

このおばちゃんは竜也の事を昔から知っており祖父が死んだあとも身寄りのない竜也の力になってくれていた

「竜也ちゃん、おはようさん。毎日偉いなぁ。これうちで作った煮物やからほれ」

「いつもありがとうございます。おばさん」

「竜也ちゃんだって一人で大変なんだからいいのよ。それにおばちゃん世話焼きと噂話しか趣味がないからたのしくてねぇ。可奈ちゃんはまだ帰らんのかい?」

「ええ、まあ」

可奈とは竜也の姉の名である

あの事件以来行方不明となり警察には捜索願いも出しているが未だに見つかっていない

「そうかい、まああの子のことだからきっと大丈夫だろうねぇ。まあ帰ってきたらすぐ知らせなさい。」

「はい、いつもありがとうございます」

竜也が深々と頭を下げるといいのよといいながら手を振って自分の家に戻っていく

竜也はその後ろ姿を見送ると家に入り、祖父の仏壇に向かう

仏壇の写真の前におばちゃんから受け取った煮物を置くと線香を立てて目をつぶる

そして事件の事を思い出していた

姉に気絶させられてから竜也が次に起きたのはもう日が高く登ってからだった

まだ朦朧とする意識の中辺りを見回すと、そこにはうつ伏せに倒れた祖父がいた

昨日の事を思い出し、急いで駆けつけるもやはり祖父からは血は流れていない

そして心臓も動いていなかった

急いで救急車を呼び病院に送られるも、手術されることはなくそこで祖父の死は決定した

死因は心臓麻痺だった

それを聞いたとき竜也は昨日のことが鮮明に頭に浮かび上がっていた

確かに祖父は姉に刺し貫かれていた

が現実は心臓麻痺である

実は姉が祖父を殺したなどと、そんな荒唐無稽な話をすることもできず、現実をただ受け入れるしかなかった

しかし姉の行方不明が竜也のみた光景が夢でない事を決定づけていた

そして祖父が残した指輪をポケットから取り出す

(姉ちゃんはなんであんなことを…しかもこの指輪が一体なんだって言うんだ)

知り合いに尋ねてみても誰も指輪の事は分からず、なんの意味を持つのかは未だに謎だった

目をつぶりながらそんなことを考えていた竜也だったがふと玄関のチャイム音で現実に引き戻される

時間は平日の午前8時である

(こんな時間に誰だ?おばちゃんはさっき来たからとなると悠也か紗希か?)

と昔馴染みの道場仲間の顔を思い浮かべる

だがその間にもチャイムは連打されておりそのペースはどんどん早くなっていく

「だー、もううるさいな。はいはい、どちら様ですかー」

と言いながら扉を開けるとそこには

見知らぬ少女と幼児が立っていた

「えっと…どちら様ですか」

竜也がそう話しかけると少女は顔を真っ赤にしながら深々と頭を下げて

「あの初めまして、私陽菜って言います。竜也さんの婚約者兼教育係としてやってきました!ふつつかものですが宜しくお願いします!」

と言った





< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop