オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
私はずらりと並ぶ本たちの、背表紙だけをつつつ……と見た。

マルクスの資本論、アンナ・カレーニナ、カラマーゾフの兄弟――どれも読んだことがない。
 
大学生として、読んでおくべきかな、と思ったところ。
 
ブブブ……と、ポッケの中が振動した。
 
スマホの着信だった。
 
画面には“着信:片岡鈴”とあった。
 
――鈴? 何の用だろう。
 
訝りながら、私はスマホを耳に当てる。

「もしもし?」

『あ、梨聖。今、電話してて大丈夫?』

「うん、大丈夫だよ」
 
私は話しながら、生協を後にし、ラウンジのソファに座った。

『梨聖に見せたいものがあるの。ちょっと来られない?』
 
5コマの後は、夢くんと牛丼を食べに行く約束があった。
 
今、始業のベルが鳴ったから、あと90分は空白のままだ。
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