好きになんか、なってやらない
 
「あ、凌太さん、お疲れ様ですー」
「お疲れ。偶然だね。一緒に飲むんでしょ?」
「あたしはそのつもりなんですけど……」


それだけ言って、じっと私の顔を見る。
この状況で、その振りは卑怯でしょ。


「ふーん……?どうして玲奈は俺たちと飲みたくないの?」


その「どうして」の意味は、あなたが一番分かってるでしょ!
キッと睨みあげると、やっぱり目の前の岬さんは面白そうに微笑んでいる。


「もしかして、俺が怖いの?」


ニヤニヤと、挑発する笑み。


「怖いってことは、俺のこと意識してる?」


ボン!と頭の中が爆発した。

怖いとか、意識してるとか、自意識過剰すぎ!
岬さんのことなんか、なんとも思ってないんだから!!


「バカじゃないの!?真央、飲もう!!」
「え?あ、うん」


相手が先輩だというのに、まさかのバカ呼ばわり。

だけどそんな私の暴言にも、岬さんは、してやったりといった微笑みを返すだけで……


「はい、こちらでーす」
「……」


嵌められた……。

と気づいた時には、もう遅かった。
 
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