SEL FISH
嘘は僕を食べる

決して私の所為じゃない。

でもどうしてこんなに居た堪れないのだろう。

「あのさ……ごめん」

目の前でいちゃいちゃとする男女。

「いや、堂本さんの所為じゃないよ」

隣で明らかに不機嫌オーラを出す男。

「てか、あたし彼女じゃないんですけど!?」

「この前会ったとき、否定できない理由がありまして……。嘘も方便のつもりが、嘘に食われるとは」

「中二っぽい発言は良いから、この状況どうにかしたら!?」

「前に公園で堂本さんの姿を見たらしいんだよ」

「ああ、あのリンチ場面で」

メロンソーダの入ったグラスの中の氷がカランと音を出して崩した。


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