召喚女子高生・ユヅキ




「じゃ、早く行こ……」

 そう言いかけて、柚月は口をつぐんだ。

 いや、待て。
 この流れは、東雲が何か企んでいる気がする。
 ヤツは、見ての通りのひねくれ者なのだ。

 柚月が予想する展開は用意してくれない。



「……私、行く必要あるの?」

 改めて尋ねてみる。

 もしかしたら、実際は甘やかされたワガママ姫だったりして。
 東雲は面倒な姫の相手を押しつけるつもりなのかもしれない。


 あるいは、とてつもない無茶ぶりに右往左往する自分を見て、笑うつもりなのかも。



 どっちもありえそうだ。


「苑依姫って大貴族の娘なんでしょ? 私……異世界の人間じゃない。大切に育てられたお姫さまが私なんかと顔合わせたら、ビックリしちゃうわよ。きっと」


 なるべく気が進まないといった態度を取ってみる。
 そんな空気を読んだのか、東雲は手元にある文箱から薄桃色の料紙を取り出した。




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