吸血鬼くんの話、
「私は、満月と呼ばれていたが…付けたのは魔女だ。お前たちが新たな名付け親になっても構わん」
ご飯を食べたら眠くなったらしい、うつらうつらとしながら話す満月。
ひかりが聞いた、あなたの名前は?という質問の答えらしい。
ひかりに視線を投げ掛けると
「満月のままでいいよ?魔女はあなたにとって、大切な人なんでしょ?」
俺の話を聞いていたひかりが答える。
大体の話を伝えると、あまりいい顔はしなかったけど理解してくれた。
「そう…か……。小僧と…ひかりに会えて……よか……」
ふらふらとしていた満月の頭は勢いよく机に打ち付けた。
「俺は小僧のままか……」
ひかりが声をあげないように笑っていた。
その笑顔をみてると、自分も自然と微笑んでいた。

その頃、ふわりと歩く人影があった。
人影はふらふらと歩き、なにかを探していた。
長い黒髪をなびかせ、月のような瞳を涙で歪ませながら歩く。
「どこにいるのよ…。お兄ちゃん…」
人影が呟く。

その人影には、影がなかった。
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