吸血鬼くんの話、
確かに、リビングには服が積まれていた。
「確かに、変な服だな…」
服を何枚か手に取ったが、赤ちゃん用ぐらい小さかったり二人ぐらい入りそうな服だったり、変な装飾がついてるものばかりだった。
「だから言っただろう。シャルドネ様が集めた服だがまともじゃないものばかりだ」
腕が痛くなってきたので満月を下ろす。
本格的に探すと、満月も着れそうな服を見つけた。
「ほら、これなんかどうだ?」
黒いつなぎだと思って広げてみれば黒猫のパジャマだった。
「私に…それを着ろと?」
かなり嫌がっている満月。
でも他に、着れそうなものはない。
「い…嫌だ。私は誇りある仕え魔だ。それに私には似合わん」
後ずさりする満月。
探してもないのだから仕方ない。
「お前が嫌がったってこれしかないだ。諦めろ」
逃げる満月を追い詰めて服を着せるのは、風呂上がりの子供に服を着せるような面倒臭さがあった。
「………似合わん…だろ…」
黒猫の着ぐるみパジャマを着て意気消沈する満月を見て笑う。
引っ掛かれた腕はいたいがなかなか面白かった。
「いや…似合ってるよ。靴はないからな…抱えてやるよ」
笑いがなかなか抜けないが話を進める。
魔女の家を囲んでいた透明な壁は消えていた。

黒猫の着ぐるみパジャマを着た少年を抱えた男子高校生はなかなかシュールだったらしく、町の人に笑われてしまった。
< 9 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop