シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

夕陽差す浜辺で

 元の浜辺へ泳ぎ着いたときには、いつしか夕暮れの景色が辺りを包んでいた。
 沈む夕陽が、今泳いだばかりの海をきらめかせている。
 夕陽と海、砂浜、木々……すごく美しい光景だった。
 遠くに数人見えるだけで、周りには、人がほとんどいない。
「綺麗……」
 私は海を見つめ、思わずつぶやく。
「少しだけ、ここで休んでいくか?」
「うん、そうする」
 私たちは砂浜の上に腰を下ろした。
「こんな綺麗な夕焼けを見るの、久しぶりかも」
 私がそう言って、ショウ君を見ると、ショウ君はじっとこちらを見つめてくれていた。
「夕陽が照らす雫も、綺麗だぞ」
 照れる様子もなく、ショウ君は言い切る。
「もう~。恥ずかしいよ」
「そんなに照れられると、困るけどな」
 白い歯を見せて笑うショウ君。
「でも、雫の言うとおり、綺麗だな。昼間の景色とまるで別物だ」
「やっぱり、隣にショウ君がいてくれるからっていうのも、綺麗に見える理由かな」
「ありがとな。俺にとっては、景色よりも雫が綺麗に見えるけど」
 そう言って、またも頭を撫でてくれる。
「嬉しいよ。この景色、一緒に見られてよかった」
 私たちは夕陽と海を見つめ、しばらくの間、寄り添っていた。

「じゃあ、着替えて、そろそろ行くか」
 そう言って、すくっと立ち上がるショウ君。
「そうだね」
 私は急いで、着替えの準備を始めた。
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