シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

水族館

「わぁ~大きな水槽!」
 水族館の中へ入るなり、私が思わず声をあげる。
 確かに、館内はそれほど広くなさそうだったけど、入ってすぐのところに置かれた大きな水槽は圧巻だった。
 沢山の魚が泳いでおり、その中には大きな魚もいる。
「ほら、こっちの水槽、見てみろよ。昔の雫が好きそうな魚がいるぞ。あと、イソギンチャクも」
 すぐに、ショウ君のそばへと駆け寄って、その水槽を眺めた。
 私って、ほんとにイソギンチャクが好きだったのかなぁ。
 今となっては、幼稚園時代の自身のツボがよく分からない。
 でも、小さな魚は可愛かった。
「イソギンチャク、少ねぇな」
「別にそんなに私、イソギンチャクにこだわってないよ」
「ほんとかよ~」
 私の腕をつつき、面白そうに笑うショウ君。
「ほんとだってば。確かに、小さい魚は可愛くて好きかな」
「そこは当たってたか」
 満足そうにショウ君は言う。
「でな、俺がなんで今日一番にここへ連れてきたのかと言うと……」
「なんで?」
「あと10分で、エサやりタイムが始まるから」
「面白そう!」
 早くもワクワクする私。
「まぁ、俺たち自身がエサやりできるわけじゃないけどな」
「見てるだけでも楽しいよ」
「だろ? 雫ならそう言うと思った」
 ショウ君は、私のこと何でもお見通しだなぁ。
「ってことで、あと10分、そこらの水槽を眺めて過ごすぞ。エサやりは大水槽で行われるらしいから、時間になれば、大水槽前へ行くからな」
「了解!」
 そして、私たちは小さな水槽を回って眺めた。
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