シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 その後、私たちは再び歩き始め、どんどん進んだ。
 やがて、分かれ道があるところまで到着すると、ショウ君が言う。
「ここからは下りだ。左の道へ行くと、俺たちの車がある駐車場とは反対側へ降りられる。だから、引き返そう」
「右の道は?」
 私は薄々、気づき始めていた。
 ここの分かれ道も、来たことがある。
 幼い頃に。
「今この先へ行っても、しょうがない。今日の夕方、もう一度来よう。今、ここに来た目的は、さっきの野原を二人で見ることと、こうして軽く運動することだから。いい運動になっただろ?」
「うん、連れてきてくれてありがとう。で、右の道には……何があるの?」
「それは今後のお楽しみだ。夕方には分かるよ」
「え~。今、教えてよ~」
「それは無理」
 笑顔で言い切るショウ君。
 何があるんだろう……。
 気にはなったけど、聞き出すことはできなかった。

 それから私たちは、もと来た道を引き返し、車のところまで歩きついた。
 ふぅ、確かに、良い運動になったかな。
 身体を動かすことが大好きなので、心地よい汗をかけて満足だった。
「そろそろお昼だな。この先、湖があるんだけど、そのそばにレストランがあるから、そこで食べようぜ。そこ、景色がいいから」
「うん! 案内よろしくね」
「よしきた! さぁ、助手席へ乗り込め~」
 そう言いつつ、助手席のドアを開けてくれるショウ君。
 こういうところ、お仕事モードのときのままだ。
 そして、こういうの、私は嬉しかった。
 すごく紳士的で。
「じゃあ、出発するぞ」
 運転席に座って、ショウ君が言う。
 私たちは、レストランへと向かった。
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