シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 案内された部屋には大きなピアノが置かれていて、雰囲気からすると「応接間」といった趣の部屋だ。
 色々な骨董品やビリヤード台などが並んでおり、壁には絵画が飾られている。
 絵についての知識はないに等しいので、どのくらい価値のあるものなのか、誰の絵なのか、などは分からなかった。
「そちらへお掛けください」
 そう言って、ソファーをすすめてくれる烏丸さん。
「失礼いたします」と言って、私は腰掛けた。
 烏丸さんは、ソファーにも椅子にも座らず、なぜかピアノへ向かう。
「大した腕前でもないのですが、少々、ピアノを嗜んでおりまして。数分で済みますので、よろしければ……」
 そう言うと、烏丸さんはピアノを弾き始める。
 私には、烏丸さんの行動の意図が全く読めなくて、面食らったままだったけど、すぐに全てを忘れてピアノの音色に聴き入っていた。
 すごく心が落ち着く曲と演奏……。
 心に立った波が、ゆっくり静まっていくようだった。
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