もう一度君の笑顔を

光輝side

月曜日の朝。


出社した俺が自分の部署に行こうとエレベーターを待っていると


「中野〜」


同期の武井に声をかけられた。


「おはよう」


「なぁ、先週は誰と食事行ったんだよ!?」


挨拶をする俺を無視して話を振って来る武井。


「誰でもいいだろ。」


そっけなく答えると


「いいよなぁ〜。モテ男は。」


羨ましがる武井だが、俺は無視してエレベーターに乗り込んだ。


エレベーターの中でも何かをぶつぶつ言い続ける武井を無視する。


自分の部署のフロアに着いてエレベーターを下りると、


「中野さん」


声をかけられた。


振り返ると、見覚えのある子が立っていた。


「あ、あの先週はごちそうさまでした。」


顔を赤らめて言う彼女。


その言葉で思い出した。


先週、食事をした子だ。


名前は・・・忘れた。


むしろ、一回でも彼女を名前で呼んだかも怪しい。


「ホントに、美味しかったです!
 
 また、誘ってくれますか?」


上目遣いで話す彼女はきっと、自分がどうやれば可愛く見えるのか知り尽くしているのだろう。


「あぁ、また機会があればね。」


笑顔で言うと、


「はい!じゃあ、また。」


顔を真っ赤にして走り去って行った。


また、なんて無い。


我ながら無駄なことをしていると思う。


中野光輝。28歳。商社でマーケティングの仕事をしてます。

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