もう一度君の笑顔を

友紀side

終業時間を1時間ほど越えた時、梨花が帰りの支度をし始めた。


いくら終業時間を過ぎているからといって、年末のこの忙しい時に、この時間に帰るのは珍しい。


「お疲れ様でした〜」


そう言いながら挨拶しながら自分のデスクを離れる梨花。


「お疲れ様、早いね。デート??」


私が、からかう様に聞くと、梨花は眉間に皺を寄せて、


「違うわよ。ちょっと野暮用よ。

 じゃあ、お疲れ様。また明日ね〜。」


そう言って帰ってしまった。


「野暮用?」


いい感じの人でもいるんだろうか・・・。


でも、あの眉間の皺はそんな感じでもなかったな。



まぁ、彼氏が出来たら教えてくれるだろう・・・。



梨花が誰に会う為に帰ったか知る由もない私は、のんきにそんなことを考えていた。




梨花が帰ってしばらく時間が経ったとき、私の携帯が鳴った。



ディスプレイには『野崎修司』と表示されていた。



取引先の都合で帰社するのが遅くなったせいで残業が長引いた私、周りには誰もいない。


私は、通話ボタンをタップした。


『もしもし?友紀?俺だけど。』


「はいはい、友紀です。どうしたの?」


『お前、来週の週末暇か?』


「うん。多分大丈夫だったと思うけど、何で?」


『美奈子がお前の誕生日祝いたいって言ってんだけど、どうする?』


「えっ?!ホント??!嬉しい!」


『じゃあ、美奈子に言っとくぞ?』


「うん!!」


『じゃあ。また時間とかはっきりしたら連絡するから。』


「りょーかい!」


『じゃあ、またな』


「うん。またね。」


私は、通話を切って、携帯をデスクに置いた。












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