もう一度君の笑顔を

友紀side

コンコン


18時20分頃。


毎日、だいたいこの時間にドアをノックする音がする。


「はーい。」



返事をすると、開く病室の扉。



入ってくるのは、付き合って半年の光輝だ。



でも、本当は半年じゃない。1年にもなるらしい。


ここ半年ほどの記憶が抜け落ちている私には、ちょっと違和感がある。



「調子はどう?」


毎日毎日、同じ質問をしてくる光輝。



確かに、体の痛みは少しずつ和らいではいるけどそんな一日で劇的に良くなるわけがない。




でも、今日は・・・


「お医者さんがね、そろそろ退院の日を決めましょうって」



そう言うと、光輝が固まった。


「光輝・・・?」


喜んでくれると思ったのに、急に黙り込んでしまった。



「頭は?もういいの?」


「うーん。記憶はまだ戻ってないけどね、普段の生活に戻った方が、記憶も戻りやすいんだって。」


「仕事は?」


「それは課長と相談しようかなって。

 記憶が抜けてるって言っても、半年くらいだし、ちょっと努力すれば大丈夫だと思うんだけど・・・」



「・・・・・・」




「・・・・光輝?」




光輝の様子がおかしい。



尋問の様に質問した後、また黙ってしまった。



ベットの隣に座って、私の足に頭をのせて来る。



でも、実は下に敷いてある光輝の手で支えているため、私の足にはほとんど重さを感じない。



怪我した私を気遣ってくれているんだと思う。



足が痛くないから、もっと体重をかけてもいいよ。


そんな気持ちを込めて、光輝の頭を撫でる。



すると、そのままの態勢で、光輝がこっちを見上げてきた。



その目には、どこか不安の色が浮かんでいて、心配になる。



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