恋宿~イケメン支配人に恋して~



「……あ、あら、ごめんなさいねぇ。お邪魔しちゃったわ~……」

「え!?いや、あのっ……」

「若いふたりでごゆっくり!皆にはここに近づかないよう言っておくから!」



慌てて千冬さんから体を離し、事情を説明しようとするこちらの話も聞かず、おばさんはすぐ体を引っ込めバタン!とドアを閉じた。



「……今の反応は、確実に誤解されただろうな」

「……ですよねー……」



ひとりのおばさんに知られれば、旅館中に話が回るのが簡単に想像つく……。それは千冬さんも同じく予想出来たのだろう、呆れたように溜息をつき体を起こす。

あぁ、明日皆になんて言われるんだろう……。あらぬ誤解をされる。絶対からかわれる。



「って、あぁ!!まずい、八木さんに話が回ったら大変!!」

「は?なんで八木?」

「だって八木さんにまで誤解されたらっ……絶対修羅場になる!!」



八木さんの存在を思い出し、一気に引く血の気。けれどその一方で千冬さんはきょとんと首を傾げる。



「なんで八木と修羅場に?」

「え?だってそりゃあ、自分の彼氏が他の女に押し倒されてたら……怒るじゃないですか」

「彼氏?」



そこまで言っても彼はまだ意味がわからなそうな顔。



……ん?この反応、なんかおかしいぞ。

隠してるとかなんで知っているんだとか、そういう風ではなくて、寧ろ……『なんの話をしているのか』が、近い?


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