恋宿~イケメン支配人に恋して~



「わ……本当に素敵」



町の雰囲気を見て伊香保にしようと決めた後、泊まるのはここにしようとすぐ決めた。

少し古さのあるノスタルジックな建物の外観、手頃な料金、宿泊者のレビューや口コミ評価もすごく良かったし、料理のメニューも魅力的。どれをとっても、ここがいいと思ったから。



予約の電話をした時も、『明日から一ヶ月連泊したい』といきなり言い出す変な女を快く受け入れてくれたし……。

腕時計でチェックイン時刻の15時であることを確認すると、引き戸を開けて旅館の中を覗き込んだ。



「こんにちはー……」



小さく呟きながら見た戸の向こうには、広い玄関と木目の床。綺麗に磨かれたその廊下の奥に、フロントと旅館の人らしき影がある。



「いらっしゃいませ、新藤屋へようこそ」



するとそこから現れたのは、淡い緑色の着物に白い帯を巻いた仲居さんであろう女性。

笑顔で静かに寄ってくる彼女は私より少し年上だろうか、品のある空気を纏っている。



「すみません、予約していた吉村ですが」

「はい、吉村様ですね。ではあちらでチェックインをお願い致します」

「お荷物お預かり致しますね」



そう続いてやってきた中年女性の仲居さんにキャリーバッグを預けると、手荷物のトートバッグだけを持ち受付へと向かう。

そして名前を書いたり、あれこれと説明を受けチェックインを済ませた。


< 13 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop