恋宿~イケメン支配人に恋して~



「そういえば理子ちゃん、ここに来て観光ってした?」

「え?あー……実はまだ。2日目にしようと思ってたんですけど、結局出来てなくて」

「あらやだ!こんな観光地に来てなにも見てないの!?もったいないわね~」



言われてみれば、私ここに来て以来全然街にも出ていないや。

観光は2日目以降にしようと思ってたけど、働くことになって自由な時間もないし……このまま観光のひとつも出来ないまま帰ることになるんだろうか。

わざわざこっちまで来てそれも切ないけど、仕方のないことだとも思う。



話していると、不意にガチャッと休憩室のドアが開けられる。そこから姿を現したのは千冬さんだ。

ただいつもと違うのは、その格好が青い丸首のニットTシャツに黒い細身のズボンという私服姿だということ。



私服姿、初めて見た……。

なんだか新鮮なその姿についまじまじと見てしまう。



「あら、千冬くんどうしたの?今日休みでしょ?」

「携帯忘れたから取りに。あと今日余程暇そうだったら何人か早退しても大丈夫ですから」

「はーい」



それだけを言いに来たのだろう。「じゃあ」とその場を去ろうとする彼を、箕輪さんは呼び止めた。



「なぁに、千冬くん今日はお出かけ?」

「お出かけ……っていうかは、たまには外の空気吸いに街に出ようかと」

「あら、なら理子ちゃん連れていきなさいよ!」

「へ?」



わ、私?

突然振られた話題に首を傾げると、千冬さんは嫌そうに眉間にシワを寄せる。



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