恋宿~イケメン支配人に恋して~



「ところで、今日の宿泊ってどれくらいいるんですか?私宿泊表もらってないんですけど」

「今日の宿泊?ないわよ?」

「えっ……えぇ!?」



な、ない!?ということは、0人!?



「いくら暇でもそれはまずいんじゃ……」

「違う違う、今日は予約がないっていうか予約不可なの」

「へ?」



予約不可?

その言葉の意味が分からずキョトンと首を傾げると八木さんはにこりと笑う。



「今夜は年に1度の、全従業員集めての飲み会だからね。毎年暇なこの時期の1日だけ宿泊不可にして、夜通し飲み会っていうのが先代からの恒例行事なの」

「へぇ……」

「本当は理子ちゃんが宿泊予定だったから飲み会出来ないかもって話だったんだけど、出来てよかったわー」



年に1度の、従業員の飲み会……。

そっか、年中無休の旅館だもん。こうして日を決めておかないと従業員皆で集まれる機会もないもんね。



そういう従業員たちの息抜きの場をつくれるところも、千冬さんから聞いたご両親らしい気遣い。

こうして、輪をつくっていくんだ。……そして、私はその輪から抜けていく。




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